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北森ペット病院


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2018年2月

2018年2月27日 (火)

癌の治療Ⅲ

北森ペット病院・北森です。当院ブログをご覧頂き、感謝いたします。


今回は、癌の治療Ⅲです。


先回、ヒトのがん治療の戦略は


① 遺伝子変異に対する治療

② 癌の免疫回避システムに対する治療

③ 癌幹細胞に対する治療

④ 転移システムに対する治療


という話をしました(悲しいかな、獣医療では、戦術の進化はあるが、ヒトの医療の様に進歩はしていないと言う話もしました)。


今回は、上記の①に関しての話です。


癌は遺伝子変異が引き起こす病気ですが、①の遺伝子変異に対する治療戦略には、大きく以下の2つの流れがあります。


A : 癌をこれまでの様に発生部位ではなく遺伝子変異で分類して治療しようという考え


B : 遺伝子変異自体を根治してしまおうという考え


Aは、これまでの治療戦術の延長線上にあります。つまり、あくまで発生した癌に対するものですね。Bは、究極的には、遺伝子変異を治療し、癌の発生前に(予防的に)治療をしてしまおうというもの。発生自体を抑制する夢の治療法ですね。


Bに関していうと、女優のアンジェリーナ・ジョリーさんが、将来の乳がん・卵巣がんの発生を予防するために、健康(見た目は)な、乳腺、卵巣を摘出しましたが、それは、彼女が、それらの癌の発生要因であるBRCA1遺伝子変異をもっていたからです。彼女は、外科処置で予防をしましたが、将来は、薬で遺伝子変異(部分)を取り除き治療します。これを、ゲノム編集技術と言います。


さて、ゲノム編集技術ですが、もしこれが進歩すると、遺伝子自体に作用させるわけですから、例えば、他の様々な難治性の遺伝病・・・・血友病、筋ジストロフー、肥大型心筋症のような病気も、同様に治せるかもしれません。


バラ色の未来が考えられます・・・・・・・


が、それはやはり人間のすることです。


例えば、筋肉量の多い遺伝子変異がわかれば、そのような変異を逆に遺伝子に起こさせるような技術も開発されるかもしれません。マンティランタの事を紹介したブログでも書きましたが、


http://kitamori.air-nifty.com/blog/2018/02/post-3faa.html


もしそれがひそかに実行されれば、ドーピング検査にはひっかかりません。


癌遺伝子治療研究は、パンドラの箱を開けたのかもしれませんね。

2018年2月25日 (日)

癌の治療Ⅱ (獣医療) 進歩と進化

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今日は、癌の治療についてのⅡ、獣医療についてです。


先日、ヒトで考えられている癌の最新の治療戦略を4つ上げましたが、残念ながら、獣医療では、どの戦略も、考慮されていません。


理由ですが、③、④に関しては、ヒトでも未だ未知の領域ですからしょうがない面があります。①に関しては、遺伝子検査をする機械自体が高額で、どこかの大学が積極的に導入して、先陣を切らないと無理でしょう。②に関しては、薬剤自体が数百万とこれも超高額医療ですので、獣医療に使用する現実味がないです。


というわけで、獣医療では、戦略的な最新の癌治療は行われていません。


しかし、既存の制癌剤(の組み合わせ)、放射線療法、術式など、戦術面は、20年前と比べるとかなり進化しています。


進化と言うのは、進歩とは違います。


進化という言葉は、進化論で有名になりました。例えば進化で有名な、ガラパゴス諸島の動物達は、進歩したわけではありません。環境に適応するように進化したのです。


21世紀、遺伝学、免疫学は目覚ましい進歩を遂げました。しかし、そこから発展した癌に関する医療技術は、これまでのものと違い、非常に高額な技術になってしまいました。


癌に関する獣医療は、今後、進化にとどまるのか、進歩していくのか、岐路に立っています。

2018年2月23日 (金)

癌の治療Ⅰ

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今日は、癌の治療について。


先だって、厚労省の発表で、がんゲノム医療の中核病院として11か所が認定されましたね。癌の治療も(人の)、いよいよ新しいステージに入ってきます。

ゲノムとは、個体の全遺伝子情報と言う意味です。


現在の癌治療の基本戦略は(治療面ではなく戦略)


① 遺伝子変異に対する治療

② 癌の免疫回避システムに対する治療

③ 癌幹細胞に対する治療

④ 転移システムに対する治療

だと思います。③、④は未だ明確でない点が多いと思います。②はオプジーボなどの開発によりようやく初期段階に入った感があります。


今回の発表は、①に関するものです。


これまでは、癌が発生した部位によって治療(科)分かれていましたが、例えば、今回のゲノム医療は、発生部位ではなく、発生要因・・・・・変異した遺伝子によって治療戦略を立てるという、治療戦略のパラダイムシフトです。


現在、次世代シークエンサーなるものを使えば、全ゲノムが解析できますので、個々の患者さんで、遺伝子変異そのものを特定することができ、テーラーメードで、治療戦略が立てられるという時代に入ります。その中核となる病院が、今回発表された下記の病院です。

国立がん研究センター中央病院(東京・中央)
国立がん研究センター東病院(千葉県柏市)、
北海道大、東北大、慶応義塾大、東京大、名古屋大、京都大、大阪大、岡山大、九州大 


です。


さて、獣医療はというと・・・つづく

2018年2月22日 (木)

癌とは何か

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しばらく、癌について書こうと思います。


さて、癌とはなんでしょうか?


癌とは、細胞が過剰に増殖した状態です。


では、過剰な細胞増殖の原因はなんでしょうか?


それは、細胞の中の遺伝子の突然変異(異常)です。4つのパターンがあります。


・細胞を増やせという命令を出す遺伝子の変異
・細胞を増やすなという命令を出す遺伝子の変異
・突然変異を修正する遺伝子の変異
・突然変異した遺伝子を持つ細胞を死滅させる遺伝子の変異


遺伝子に突然変異を起こす原因には、5つのパターンがあります。


・日々の細胞分裂の時(新陳代謝)
・ウイルス感染(子宮けいがん)
・化学物質
・慢性炎症(ピロリキンの感染)
・放射線・紫外線


特に日々の新陳代謝の時の突然変異が重要です。体の中の細胞は、常に分裂を繰り返し、古いものから新しいものに変わっていますが、その分裂の際に、遺伝子に突然変異が起こることがあるのです。


1個の細胞には約60億個の遺伝子のもとがあって、確率論的に、1回の細胞分裂で60個の突然変異が起こります。1日当たり、体中で何千億回もの細胞分裂が起こっているので、突然変異の発生数は膨大です。


ただ、今の研究では、上記にも書きましたが、突然変異を修正したり、変異した遺伝子をもつ細胞を死滅させるような遺伝子もあり、突然変異した細胞がずっと生き残るわけではありません。


ただ、年齢を重ねると、その遺伝子変異の数が増えていき、いよいよ癌細胞が誕生するのです。


最近読んだ本には、遺伝子の変異の数が5個程度あると(血液癌の場合は2個)、癌が誕生するとありました。


人間の場合、変異の数が5個蓄積するには、数十年かかるということですね。ただし、遺伝的に(先天的に)癌家系のヒトは、生まれつき変異を持っているので、5個たまるまでの年数が早く、若くして癌になるということですね。

2018年2月21日 (水)

ドーピングと病気の不思議な?関係

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今回は、ドーピングと病気の不思議な?関係についてです。


冬季オリンピックも、もう少しで終わりです。


今回のオリンピックも、数人のドーピング違反者が資格停止となりました。ロシアに至っては、組織的なドーピングが指摘されましたね。


さて、ドーピングですが、基本的に3つのドーピングがあります。興奮、筋肉量増加、持久力増加です。


このうち、持久力を上げるドーピングには、自己血輸血といって、自分の血を自分に輸血して、赤血球量を上昇させるという方法があります。赤血球は酸素を体に運ぶので、赤血球量が増えれば、組織に運ばれる酸素量も増えるので、持久力があがるという理屈です。


自己血輸血ドーピングで有名になったのは、ツールドフランス7連覇のアームストロングで、映画にもなりましたね(ドーピング発覚後、記録はく奪)。


冬季オリンピックの名選手で、この自己血輸血ドーピングをずっと疑われた選手がいました。クロスカントリーで金メダルと3つとったマンティランタです。


彼の血液は、赤血球が非常に多かったのですが、彼は、ドーピングを否定し続けました。


医学が進歩し、彼の遺伝子を調べたところ、なんと、赤血球を作る遺伝子の突然変異で赤血球が沢山作られる、家族性多血症であることが後年わかりました。つまり病気だったわけですね。


パラリンピックの定義は知りませんが、明らかに病気でも、それが有効に働く場合は、パラではなくて通常のオリンピックへの参加になるのでしょうが、何かこの話は、腑に落ちない気がいつもしています。


また、癌治療の最前線では、遺伝子を人為的に変化させるゲノム編集技術が注目を集めています。もし今後、マンティランタのような遺伝子への変異を、人為的に安全に行える技術が確立したら、ドーピング検査ではひっかかりません(病気による変異か、人為的な変異はわからないので)。


近い将来、オリンピックは、遺伝子組み換え大会になるかもしれません(だって、マンティランタの記録がが正式なオリンピック記録として認定されたということはそういう事です)。

2018年2月20日 (火)

ステーキハウス症候群

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今日は、ステーキハウス症候群について。


例によって、Doctor(人医)に最新の医療情報・学会情報・論文を提供する専門のサイトでの情報ですが、今、もっとも注目されている(医師のアクセス数が高い)情報です。


ステーキハウス症候群
https://www.yodosha.co.jp/rnote/trivia/trivia_9784758115995.html


米国で多い、ステーキを食べた後によく起こる胸痛を主訴とする病態。要するに、食道に食べ物が詰まった病態ですね。


犬猫の場合はステーキは食べないでしょうが、同じような症候群に出会う事が稀にあります。それは、異物の誤食です。私も、犬が異物をのんで、食道に詰まり、内視鏡で胃まで押し込んで、開腹手術をして胃から摘出したことがあります。


さて、食べ物が詰まると言えば、


日本では、どちらかというと、お餅による窒息死が有名ですが、あれは、食道ではなく、気管の入り口を餅が塞いで起こる窒息死です。


そのようなことは、犬猫に起こるのでしょうか?


その昔、安楽死希望のワンちゃんがいました。


疾患的に、飼い主も、我々医師も、本当に苦渋の選択でした。


いよいよ安楽死処置の時間になって、飼い主さんが、最後に、大好きだったお菓子を沢山食べさせてあげたいと言われたので、もちろん同意しました。


そして、飼い主がお皿に山盛りのお菓子を出した瞬間、そのワンちゃん、一気に食べたんですよね。そうしたら・・・・・本当に一瞬でした・・・・・急に苦しんで死亡しました。おそらくお菓子が気管を塞いだのと思います。


対処しようとしましたが、何せ、安楽死の案件です、飼い主さんを見ると、そのまま逝かせてあげてくださいという雰囲気でしたので、状況を見守るしかありませんでしたが、食べて、苦しんで、呼吸が止まるまで数秒だったと思います。


あのワンちゃん、安楽死よりもよかったのかな~って、お餅の時期になると思いだします。



追記

最近、い●な●ステーキというお店が大人気の様ですが、皆様、お気をつけあそばせ!

2018年2月18日 (日)

風邪をめぐるお話②

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本日は、風邪(人の)についてのお話②です。


先だって、風邪に抗生物質は、必要ないかもしれないと言うお話を書きましたが、


http://kitamori.air-nifty.com/blog/2018/02/post-8394.html


今日は、風邪をひきやすい人とはどういう人かについてです。国内4万人を対象とした疫学研究(本年、日本成人病学会での発表)からの抜粋です。


風邪をひきやすいと自覚している生活習慣等を解析すると

・短時間睡眠(5時間以下)

・時々飲酒(月1~3回)

・運動習慣なし

・食事が偏食、不規則

の項目と相関があることが示唆されたとのことです。


ちなみにBMI 23~25の層は、風邪をひきずらいそうです。


良く考えたら、想像できる範囲の結果がほとんどですが、それを数万人を対象に、しっかり調査して発表する医療の領域に、本当に頭が下がります。


獣医療だって、例えば、めちゃくちゃ多い、ネコ膀胱炎における生活スタイル解析とか大学が音頭とってやってくれないものでしょうか?

2018年2月17日 (土)

ふふふ・導入

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本日、おそらく現段階で世界最高峰レベルの動物用解析型心電計を、千葉県第一号で納入しました。まだ国内の大学病院にも入っていないすぐれモノです。


解析心電計とは、不整脈を評価する機械です。


これまでのものと違い、心拍数400まで解析できるスペックです。ウサギ、フェレットの解析も可能ということですね。


国内の動物病院で、解析心電計が入っている病院は、まだまだ2割程度だと推定されます。ホルター心電計になると数%くらいですが、当院には研究テーマの為に3台保持しています。獣医の心電図の世界は、はっきり言って、人医と比べると、高校生レベルですが、なんとか頑張りたいところです。


経験的には、解析心電計は、てんかん発作と、心臓病由来(不整脈)の発作を区別し、誤診を無くす初歩の手段として必要な医療機器だと思います。10年以上前に、学会で、てんかん発作と診断された症例のうち、実は不整脈が原因だった症例が3割程度あったとの報告がありました。


私も一度、どうみても痙攣発作だと思っていた症例で、高度ブロック(不整脈)が発生していたイヌの転院症例を経験したことがあります。ヒトですと数秒脈が飛べば失神でしょうが、その子は、15秒くらい脈が飛んで、その間、意識はあり、でも痙攣してました(失神しないから最初わかりませんでした)。


ペットの不整脈疾患の多くは、治療できないか、できたとしてもペースメーカーなどの高額医療になるので、なかなか治療に結びつきませんが、獣医療の場合は、原因がはっきりするだけでも、(誤診を防ぐ意味もありますが)、納得して天寿を全うさせることができます。


一般的な日本車程度はしますが、もう少し、国内動物病院に導入が進んでも良い機器だと思いますね。

2018年2月16日 (金)

ストレスに関するお話・番外編

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本日は、先日のストレスについてのお話の番外編です。


そもそもストレスとはなんでしょうか?


様々な定義があるようですが、体や精神に対する負荷という考えが一般的だと思います。
そして負荷に対する、神経系の反応が、ストレス応答反応です。動物は、この応答反応でストレスに対処しようとします。


さて、人間は太古の昔から、強烈なストレス(敵や、肉食獣に出会う)下に置かれると、自身の生存を守るために、心臓の拍動数を上げ、筋肉の血管を開きます。これは、戦うか、逃げるかの行動をとるために、筋肉の血液量を増加させて筋肉を最大限動かす目的のストレス応答反応です。


この場合の反応は、交感神経が興奮して、カテコラミンという物質が放出されて起こるのですが、ごく稀に、ストレスの度合いが高すぎて、カテコラミンが過量に放出されると、心臓の収縮が異常をきたし死亡することがあります。その時の心臓の形から、タコつぼ型心筋症と呼ばれています。


現代では先進国においては、敵や野生動物に襲われるなんて事はほぼないでしょうが、例えば肉親の死、失恋(別離)のような場合に、タコつぼ型心筋症が発生することが知られています。


先だって、たまたまこのタコつぼ型心筋症の論文を読んでいると、恐ろしいことに、喜ばしい事でも、あまりにその度合いが強いと、この疾患が発生することが報告されていました。


サプライズパーティー、子供の結婚式、スポーツ観戦、孫の誕生、大きな賭けごとの当選・・・・などです。


(そう言えば、知り合いの親御さんも結婚式で倒れました)


不快な事ばかりではなく、喜ばしい事でも、その程度があまりに大きければ、心臓にとっては、重大な影響を与えるということで、それはストレスと呼ぶのだと思います。


生物って本当に不思議ですね。

2018年2月14日 (水)

ストレスに関するお話

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本日は、ストレスについてのお話です。


世の中、3連休でした。当院は、点滴のような定期的な通院治療や、入院の子の治療を除き、診察はなく、いつになくしっかり休めた2連休(土曜日は診察日)でした。


私、普段は、診察の後、就寝ギリギリまで論文読んだり、ほぼほぼ起きている時は、何か仕事に関わる本を読んだりしていますが、昔から、お正月や今回のような連休になると、そのような情報収集能力が落ちて行きます。やる気がプツンと途切れます。


長期の休みだから、まとめて勉強・・・・となると、逆に、作業効率がかなり落ちるのです。


先だって、某新聞でも有名な心理学者が書いておられましたが、動物は、適度のストレスがあった方が作業効率は上がるという有名な論文があります。


ネズミを使った有名な実験です。ネズミに白と黒を選ぶ課題を与えて、間違ったら電流を流します(残酷な実験ですが・・・・)。


その結果、ネズミは、流す電流の強さによって、課題の正解率が変わることがわかりました。


電流がまったく無い時や、電流が軽いときよりも、やや電流が強い方が正解率が上がります。電流が強すぎると、今度は逆に正解率は下がってきます。


この実験から言えることは、動物(ここではネズミですが)は、ある程度のストレスがあった方が、作業効率は上がると言う事です。


ネズミに対する電流刺激を、人のストレスの程度に、どう外挿するかは難しい点ですが、皆さんの経験でも、ある程度忙しくしていた方が、色々なことに目が向く・・・・知的好奇心が上がるということありませんか?


(小さい声で言いますが、友人の同業者でも、流行っている病院の先生の方が、学会や勉強会への参加率が高いような気がします。あくまで印象ですが・・・・・)


過労死の様な働き過ぎは絶対によくありませんが、ある程度ストレスを飼い慣らし、それを向上心のエネルギーにできれば良いと思います。


ストレスも使いようということですね。

2018年2月12日 (月)

風邪をめぐるお話

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本日は、風邪(人の)についてのお話です。


最近、風邪の治療に関して、医師の診療報酬が改定されて、話題になっています。改定で、風邪の時に、抗生物質を処方しない方が、報酬が上がるようになりました。


この改定の背景には、あまりにも意味のない抗生物質の処方、乱用の為、耐性菌が増え、問題になっているからです。


医師に、抗生物質を乱用させないような改定なのです。


さて、そもそも、風邪ってなんでしょうか?


学会でも、明確な診断基準は無いようで、上気道炎と、気管支炎の総称で、先生によっては下気道炎を含むという方もいらっしゃいます。


では、原因は、何でしょうか?


実は、信頼できる臨床研究は少ないようですが、現段階では、症例の多くはウイルスが原因の様ですが、中には(特に高齢者)細菌のケースもあるようです。


ウイルスが原因であれば、当然抗生物質は無意味なわけで、今回の抗生剤乱用を防ぐ国の改定にも納得です。


ただ、風邪に病院で行っても、これはウイルス、これは細菌と原因を調べてから処方することは、現代の医学では不可能です。


原因が細菌だった場合・・・特に高齢者の風邪のケースは、症状がこじれる場合もあるので、やはり抗生物質が必要となるわけで、風邪の患者さんに、抗生物質を処方しないというのも勇気のいる決断だと思います。


では、逆に抗生物質を処方する場合、どの程度の期間が妥当かというと、専門家によると2日程度(長くても5日以内)とのことです。


そもそも今回の診療報酬の改定は、抗生物質の乱用による耐性菌を蔓延させないための施策でした。しかし、抗生物質を乱用しているのは、医師だけではありません。我々小動物(ペット)獣医師と、家畜の業界です。特に家畜の業界は、抗生物質を多用しないと成り立たない状況になっています。


抗生物質の発見は、人類の福祉に多大な貢献をしました。しかし、その乱用が、逆に人類を追い詰めることになるかもしれないのは皮肉ですが、我々獣医師も、ここの症例もさることながら、もっと大きな視座で処方を考え直すときかもしれません。

2018年2月10日 (土)

獣医師の表情・言葉②

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本日は、獣医師の表情・言葉についての②です。


先回、獣医師の表情・言葉について、
様々な人格の内的な対立が、獣医師の表情を作ります。時に憂鬱で、時に悩み・・・・・非常にノイズのある表情になります。そして、発する言葉は、曖昧になる場合も当然出てきます・・・・・と書きました。


この表情と言葉とはまったく正反対の表情と言葉を発する人たちがいます。


それは、今シーズンまっただ中の、スポーツエリート達です。


彼らの表情は、曇りが無く、言葉もよどみがありません。


一般的には、それを清々しい若さの象徴のようにとると取るむきもありますが、私は違うと思います。まず、通常の若者は、自分が何者かわからない混とんとしているのが常態です。目標なんて聞かれても言葉はよどみ、口ごもります。彼らの発する様には、発言できません。若さとは無縁です。

それでは、逆に彼らは大人びているのでしょうか?


違うと思います。大人の世界は、実力だけではなく、運やコネや妬みやシットが渦巻く世界です。しかも、自分以外のことも考えなくてはいけません。彼らは良く『自分との戦い』という表現をしますが、大人の世界は、自分との戦いだけではない世界です。大人はあのような発言はしませんし、表情に、愁いが出てくると思います。


彼らは、大人ではなく、通常の青年らしくもない、そして、運よく自分との戦いにのみ・・・計量化できる実力の世界にのみに(ある一定期間だけ)生きていられる、稀有な存在なのです。

2018年2月 9日 (金)

獣医師の表情・言葉①

北森ペット病院・北森です。当院ブログをご覧頂き、感謝いたします。


本日は、獣医師の表情・言葉についてです。


先だって、人格の多重性について書きました。
http://kitamori.air-nifty.com/blog/2018/01/post-bdb3.html


人は、実は、普段、いくつもの人格をコントロールしており、単一の人格しか表出できない場合が案外妄想狂だったり、多数の人格のコントロールの不備が精神疾患につながるのではないかという話でした。


いくつもの人格をコントロール・・・と書きましたが、複雑に絡み合った多数のアモルファスのような人格の塊を、全体として制御しているイメージかもしれません。


さて、私達の中には、当然獣医師という人格があります。しかし一般生活人としての人格もあり、科学の徒としての人格もあります。


例えば飼い主から、『ペットとキスするのは良くないか?』と聞かれた場合、獣医師の人格は、『感染症の問題があるから止めましょう』という答えを用意すると思いますが、一般的に、ペットを飼っていてキスしない人はいないと思います。獣医師も、おそらく、しています。一般生活人としての彼(獣医師)の回答はどうなるのでしょうか?


非常に高額の治療をすれば寿命が延びるのが明らかな場合、しかし、飼い主が経済的な負担に耐えられない場合、そしてそれを獣医師自身が理解している場合、獣医師の人格と、一般生活人としての人格は、どのような対立を生むのでしょうか?


科学的には、我々は決して最先端の技術を獣医療に生かしているわけではありません。新薬は、おおむね10年以上前には研究が開始されているものです。外科技術・・・例えば臓器移植などは、30年以上前に、散々人への応用をするために、犬などで実験されていますが、獣医師で出来る人はいません。内科技術・・・例えば腎臓病にもっとも有用な人工透析技術なども、犬で1930年代には散々研究されましたが、獣医の臨床では日常ではありません。最先端を知る科学の徒としての人格と、それを応用できない獣医師の人格の間にはどういう葛藤が生まれるのでしょうか?


様々な人格の内的な対立が、獣医師の表情を作ります。時に憂鬱で、時に悩み・・・・・非常にノイズのある表情になります。そして、発する言葉は、曖昧になる場合も当然出てきます。


もし、獣医師の表情があまりに単一のわかりやすいもので、発する言葉も、常に葛藤の無いわかりやすい言葉であれば、それは獣医師の人格が他の人格からかい離した状態・・・・生身の生活(さまざまな人格)を引きずっていない、獣医師オンリーの人格で診察している・・・・・もしかしたら、それは演劇的に獣医師を演出して診察しているのかもしれません。

2018年2月 8日 (木)

スターマン

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イーロン・マスクのロケット打ち上げ成功しましたね。


ロケットの先には、彼の愛車が取り付けられていて、操縦席には、宇宙服を着たマネキン人形が鎮座しているのですが、


http://jp.autoblog.com/2018/02/06/elon-musk-tesla-roadster-spacex-mars-launch/


その名前は『スターマン』。


デビッド・ボウイですね。


昨年の、私のfavorite songでした。

http://kitamori.air-nifty.com/blog/2017/12/post-2c3f.html



大航海時代もそうでしょうが、冒険家が、人類の世界を広げるんですよね。あの時代のモチベーションは経済活動だったそうですが(市場を広げたいという欲求)、宇宙には市場なんてないですから(宇宙人がいれば別ですが)、彼らの動機は、単純な新世界・・・宇宙・・・へのロマンなのでしょうか?


50億年後には、太陽は膨張し、その影響で地球の地上温は上がり、人類は地球に住めなくなります。それまでに、原子力より更に高出力のエネルギーを発見して(最新物理学ではブラックホールの人工作成が良いとか)、宇宙船地球号で、全人類は、火星に脱出する必要があります(そうなってもいずれ更に膨張した太陽光が火星ものみ込むのですが)。


数十億年後の未来には、人類はみんなスターマンにならなきゃいけない・・・・・今回の民間有人ロケット開発の第一歩の成功を聞いて、そんな事を思う私でした。


昨年紹介したものとは違うビデオ
https://www.youtube.com/watch?v=sI66hcu9fIs

2018年2月 7日 (水)

TVの健康(医療)情報番組

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今日は、TVの健康(医療)情報番組についてです。


TVをつけるとホボホボ毎日、どこかの局で健康(医療)情報番組をやっています。


こういう仕事をしていると、知り合いから、どの番組が有益か聞かれることが良くあります。
さて、どのような番組が、健康(医療)情報番組として良いのでしょうか?


その前に、こんな話を・・・・。


女性 『私の事、嫌い?』

男性 『ああ、すごい嫌いだよ!』


この会話の『嫌い』という言葉は、シチュエーションによって、言葉通りの『嫌い』にも、はたまた真逆の『大好き』にも受け取ることができます。


言葉自体のメッセージが、言葉が語られる状況から発信されるメッセージによって、ま逆になることだってありえるのです。


つまり、言葉に加えて、言葉が語られる状況は、とても大切だということです。


そのような観点から昨今のTVにおける健康(医学)情報番組を見ると、そら恐ろしいものがあります。


多くの番組で、情報提供者は、よどみが無く、躊躇もなく情報を発信しています。まるで、疾患の原因が全て解決されたあとのような、シンプルでわかりやすい、いや時には明るいバラエティ的な雰囲気の情報発信の仕方が大半を占めています。


しかし実際の医療現場は、どうでしょうか?まだまだ原因がわからないことだらけでしょうし、また、たとえ治療法が確立していても、その薬剤が体に合わない人だっています。どこまでいっても不確定な現場です。


多くの番組の作り方は、医療を完成された技術体系だと間違って受け取られかねない伝え方がほとんどで、非常に危険を感じています。


ちなみに私は、教育TVの医療番組しか真剣に見ません。感情を抑えて、静かに自制的に語る番組作りが、医療の現場を象徴していると感じるからです。

2018年2月 6日 (火)

患者さんの不満④ 信頼感

北森ペット病院・北森です。当院ブログをご覧頂き、感謝いたします。


患者さんの不満についての④・・・・・信頼感についてです。


患者の不満には、『医師の説明(不足)』が一番関係しているというデータをお話しし、言葉を使うことの難しさと、それをお互いに乗り越える方法(インフォームドコンセント)について書きました。


今回は、それに加えて、(獣)医療現場に重要な、信頼感について書きます。飼い主側の(獣)医師に対する信頼感です。


通常の商取引と違い、医療行為は、消費ではありません。消費は、1000円を払い、1000円の商品を購入し、それが妥当な取引であると思えばそこで終了です。しかし医療行為は、1000円のお薬を購入しても、効果がある場合と、無い場合があります。効果が無かったからと言って、返金するということはありません。効果が無かったことも、有益な情報として、次なる医療行為へ繋がるからです。


信頼感があれば、予期せぬ状況が起こっても、それが予見不可能だったことを合理的に納得でき、次の治療ステップに(獣)医師と協力して進めます。逆に、信頼感がないと、その時点では、言葉では納得していた治療が、功を奏さない時に、関係は極端に悪化します。


先回お話した、言葉を使う事の難しさの認識も、それを乗り越えるためのインフォームドコンセントも、飼い主側の(獣)医師に対する信頼感なくして決して成り立ちません。


さて、その信頼感ですが、どのように形成されるのでしょうか?


齢を重ね、私も患者側に立つこともしばしばですが、私の経験では、直感が案外重要かもしれません。


合理主義者の私が直感と言うのも変なので、経験、知識に加え、言葉にならない五感を使った感覚の総合知と言い換えても良いのですが・・・、長いので、やっぱり直感と言っておきます。


例えば、普段、私たちは、案外直感を利用して生活してませんか?このWebサイトは怪しいとか、このTV番組は信用できるとか、初めて行った美容院がなんか居心地良いとか、このブランドショップの店員は肌にに合わないとか・・・・・。


様々な情報(噂、紹介、HP)を頭に入れて、病院へ行きます。病院の雰囲気、看護師の会話などを身体で感知します、いよいよ担当医と対峙します。そこで、あなたの直感は、どう反応するか。


常に標準治療を実施する良い(獣)医師に出会ったとしても、飼い主側にそれを認識する能力・・・(例えば)直感かもしれません・・・・・がなければ、信頼感は成立しません。


信頼感を得る努力は当然(獣)医師側に必要ですが、それは、もしかしたら、飼い主側に立ちあがった直感による信頼感を、補強する材料に過ぎないかもしれません。


そうなると、あなた自身の能力が、あなたにとって良い獣医師に出会えるために重要なファクターかもしれません。


つづく

2018年2月 4日 (日)

患者さんの不満③ 正しい判断はできない

北森ペット病院・北森です。当院ブログをご覧頂き、感謝いたします。


今日は、患者さんの不満についての③で、(獣)医師は、正しい判断はできないと言うお話です。

先だって、患者の不満には、『医師の説明(不足)』が一番関係しているというデータをお示しいたしました。


確認しますが、Aという症状でBと言う検査をしてCと判断してDの薬を出す・・・・医療の流れは、このパターンに尽きます。


この場合は、Dが効果を示すことで、後付けでCの判断は正しかったとなります。つまり医療行為の正しさは、常に過去完了形で表されるのです。


要するに、私たちは、医療行為をする際に、正しい判断ではなく、その時点で、『正しいと思われる判断』しかできないのです。逆に言うと、Dの薬が効かないことは良くあるわけです。


そういう状況で、、『(獣)医師の説明』をどう考えていくかをお話致します。インフォームドコンセントの話とかぶりますが、


① 患者は、(獣)医師の正しいと思われる判断(AからDにいく論理)をまず認識する
② 患者は、その論理を自身で理解する
③ (獣)医師は、患者が①を理解したことを、認識する
④ (獣)医師、患者は、Dを採用する

この流れが重要です。この流れさえしっかりとしていれば、Dの効果がなかった場合も、患者は、自身の事として何故Dの効果がなかったのか、(獣)医師側と、一緒に考えて行けます。


日常の話に置き換えると


① 学校の先生は『虹は7色』だと言った
② 生徒は実際に虹を見て7色だと理解する
③ 先生は、生徒が7色だと認識したことを知る
④  教室で、今後、虹は7色だという知見を採用する


ここまでは、すご~く普通の話ですが、良く知られているように、虹の色は、民族によって違います(アメリカは6色、フランス5色、アフリカは3色)。


つまり④は普遍的ではない、①は、日本では正しいと思われる判断にすぎなかったということです。でも、①~④を正確に実施していれば、生徒は、先生に対する信頼をなくすでしょうか?おそらくいっしょに、どうしてそういう状況になったのか考えると思います。


(獣)医師は、正しいと思われる判断しかできません。医療・・・いや科学というものはそういうものです。そういう状況下で、患者側から出ている(獣)医師の説明に対する不満の源を、出来る限り論理的に考えて、相互理解を行い、医療を出来る限り信頼の上にたった科学技術にしていかなくてはいけません。


つづく

2018年2月 3日 (土)

臭い 匂い におい

北森ペット病院・北森です。当院ブログをご覧頂き、感謝いたします。


本日は、におい についてです。


人間の五感のうち、嗅覚の神経だけは、知的活動をつかさどる大脳新皮質を介さずに、感情や本能をつかさどる海馬に直接繋がっています。


(故に、アロマセラピーでリラックス効果が期待できるわけですが・・・・・・・)。


中年の私にとって、臭いは、切実な問題です。私もそうですが、友人の同世代の先生に聞いても、みんな気にしており、様々な香水を試しています。


最近、こんな商品が売り出されることになったので、枯れた感じの病院にならないように、早速、購入してみました。


高度医療機器を開発しているメーカーで、ネーミングも良し(笑)!


https://kunkunbody.konicaminolta.jp/

2018年2月 1日 (木)

患者の不満②

北森ペット病院・北森です。当院ブログをご覧頂き、感謝いたします。


今日は、患者さんの不満についての続き・・・②です。


無限の症状のパターン(症状は個体にって違うものです)を、有限の時間で、有限(に意味)の言葉で説明する難しさを常に背負っているのが医療者だと思います。


この続きですが、


一つのストーリー(AはBの検査でCだと思うからDで治療する)がうまくいかないことは良くあるという話はしました。また、その場合、その後、様々なパターンのストーリが生みだされる可能性もあるという話もしました。


そこで、結局、あたりまえの話になるかもしれませんが、


先生の話・・・話と言うのは一時的なものです・・・は話として、その時点の事実認識程度に留めるべきだと思います。先生のある時点での話の整合性の無さ(要するにその時点での治療の失敗)は、そのストーリーではうまくいかなかったという事実のレベルに留める。


それ以上に重要なのは、あなたがそれでも・・・・繰り返しますがストーリーの破たんは良くあることです・・・・先生を信じられるかという事です。


事実は、自分の外部にあり、信頼は自分の内部にあります。この二つをうまく切り離して考えて、その先生が行う医療行為を認識していくことが重要です。


(エマージェンシーの場合は、そんな悠長なことは言ってられないのも分かっています。繰り返しますが、無限の症状を、有限の時間で、有限の言葉を使って説明するのは本当に難しいのです。)


稀に、非常に不満があるけど、通われている方がいらっしゃいますが(そんなのはこちらにも十分伝わっています)、大体、後味の悪い良くない結末で終わります。


この話、まだ続きます。

チョコレート

北森ペット病院・北森です。当院ブログをご覧頂き、感謝いたします。


今日は、チョコレートの不思議な話です。


(毎度のことながら)医師向け情報サイトから得た情報です。


世には不思議な話があるもので、チョコレートの接種量が多い国は、ノーベリストの数も多いというデータがあるそうです。


http://www.businessinsider.com/chocolate-consumption-vs-nobel-prizes-2014-4


上のサイトの図ですが、縦軸が国民10万人あたりのノーベリストの人数、横軸がチョコレート消費量(kg/年・人)です。


見事に、相関関係があるではないですか!


いかも、このデータの出典先は、高級誌 N Engl J Medです。

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/23050509


非常に驚きました。


もっとも、相関関係はありますが、因果関係は不明なので、すわチョコレートを子供に食べさせて・・・・って訳にはならないでしょうが。


世の中には、健康・医学に関する面白い話がまだまだ沢山ありますね。


(ちなみに、因果関係と、相関関係は違います。これを読み間違えると大変なことになります。例えば、年齢と貯蓄率は相関関係はありますが、年齢自体と貯蓄率には因果関係はありません。)

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