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北森ペット病院


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2018年2月 9日 (金)

獣医師の表情・言葉①

北森ペット病院・北森です。当院ブログをご覧頂き、感謝いたします。


本日は、獣医師の表情・言葉についてです。


先だって、人格の多重性について書きました。
http://kitamori.air-nifty.com/blog/2018/01/post-bdb3.html


人は、実は、普段、いくつもの人格をコントロールしており、単一の人格しか表出できない場合が案外妄想狂だったり、多数の人格のコントロールの不備が精神疾患につながるのではないかという話でした。


いくつもの人格をコントロール・・・と書きましたが、複雑に絡み合った多数のアモルファスのような人格の塊を、全体として制御しているイメージかもしれません。


さて、私達の中には、当然獣医師という人格があります。しかし一般生活人としての人格もあり、科学の徒としての人格もあります。


例えば飼い主から、『ペットとキスするのは良くないか?』と聞かれた場合、獣医師の人格は、『感染症の問題があるから止めましょう』という答えを用意すると思いますが、一般的に、ペットを飼っていてキスしない人はいないと思います。獣医師も、おそらく、しています。一般生活人としての彼(獣医師)の回答はどうなるのでしょうか?


非常に高額の治療をすれば寿命が延びるのが明らかな場合、しかし、飼い主が経済的な負担に耐えられない場合、そしてそれを獣医師自身が理解している場合、獣医師の人格と、一般生活人としての人格は、どのような対立を生むのでしょうか?


科学的には、我々は決して最先端の技術を獣医療に生かしているわけではありません。新薬は、おおむね10年以上前には研究が開始されているものです。外科技術・・・例えば臓器移植などは、30年以上前に、散々人への応用をするために、犬などで実験されていますが、獣医師で出来る人はいません。内科技術・・・例えば腎臓病にもっとも有用な人工透析技術なども、犬で1930年代には散々研究されましたが、獣医の臨床では日常ではありません。最先端を知る科学の徒としての人格と、それを応用できない獣医師の人格の間にはどういう葛藤が生まれるのでしょうか?


様々な人格の内的な対立が、獣医師の表情を作ります。時に憂鬱で、時に悩み・・・・・非常にノイズのある表情になります。そして、発する言葉は、曖昧になる場合も当然出てきます。


もし、獣医師の表情があまりに単一のわかりやすいもので、発する言葉も、常に葛藤の無いわかりやすい言葉であれば、それは獣医師の人格が他の人格からかい離した状態・・・・生身の生活(さまざまな人格)を引きずっていない、獣医師オンリーの人格で診察している・・・・・もしかしたら、それは演劇的に獣医師を演出して診察しているのかもしれません。

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