癌の治療Ⅲ
北森ペット病院・北森です。当院ブログをご覧頂き、感謝いたします。
今回は、癌の治療Ⅲです。
先回、ヒトのがん治療の戦略は
① 遺伝子変異に対する治療
② 癌の免疫回避システムに対する治療
③ 癌幹細胞に対する治療
④ 転移システムに対する治療
という話をしました(悲しいかな、獣医療では、戦術の進化はあるが、ヒトの医療の様に進歩はしていないと言う話もしました)。
今回は、上記の①に関しての話です。
癌は遺伝子変異が引き起こす病気ですが、①の遺伝子変異に対する治療戦略には、大きく以下の2つの流れがあります。
A : 癌をこれまでの様に発生部位ではなく遺伝子変異で分類して治療しようという考え
B : 遺伝子変異自体を根治してしまおうという考え
Aは、これまでの治療戦術の延長線上にあります。つまり、あくまで発生した癌に対するものですね。Bは、究極的には、遺伝子変異を治療し、癌の発生前に(予防的に)治療をしてしまおうというもの。発生自体を抑制する夢の治療法ですね。
Bに関していうと、女優のアンジェリーナ・ジョリーさんが、将来の乳がん・卵巣がんの発生を予防するために、健康(見た目は)な、乳腺、卵巣を摘出しましたが、それは、彼女が、それらの癌の発生要因であるBRCA1遺伝子変異をもっていたからです。彼女は、外科処置で予防をしましたが、将来は、薬で遺伝子変異(部分)を取り除き治療します。これを、ゲノム編集技術と言います。
さて、ゲノム編集技術ですが、もしこれが進歩すると、遺伝子自体に作用させるわけですから、例えば、他の様々な難治性の遺伝病・・・・血友病、筋ジストロフー、肥大型心筋症のような病気も、同様に治せるかもしれません。
バラ色の未来が考えられます・・・・・・・
が、それはやはり人間のすることです。
例えば、筋肉量の多い遺伝子変異がわかれば、そのような変異を逆に遺伝子に起こさせるような技術も開発されるかもしれません。マンティランタの事を紹介したブログでも書きましたが、
http://kitamori.air-nifty.com/blog/2018/02/post-3faa.html
もしそれがひそかに実行されれば、ドーピング検査にはひっかかりません。
癌遺伝子治療研究は、パンドラの箱を開けたのかもしれませんね。
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