癌の治療Ⅳ なぜ再発するか
北森ペット病院・北森です。当院ブログをご覧頂き、感謝いたします。
今回は、癌の治療Ⅳ、なぜ癌は再発するかについてです。
先回、ヒトのがん治療の戦略は
① 遺伝子変異に対する治療
② 癌の免疫回避システムに対する治療
③ 癌幹細胞に対する治療
④ 転移システムに対する治療
という話をしました(悲しいかな、獣医療では、戦術の進化はあるが、ヒトの医療の様に進歩はしていないと言う話もしました)。
実は、再発は、上記の③に関係するお話です。
ヒトのある種の乳がんでは、寛かい後、10年以上たって再発するような症例があります。
何故そのようなことが起こるのでしょうか?
それには、癌幹細胞という癌の親玉見たいな細胞が関係しています。
癌発生時に、癌幹細胞は、免疫機能を巧みにかいくぐり、骨髄中(骨の中)に移行し、休眠状態になります。休眠というのは、増殖しないと言う意味です。
現在の癌の薬や放射線療法は、癌の増殖能をターゲットにしているので、休眠した癌幹細胞にはまったく効果がありません。
休眠状態の骨髄中の癌幹細胞は、ある日突然休眠状態から目覚め、増殖能を起動させ、癌が再発するというメカニズムです。
現在の癌幹細胞治療戦略としては、休眠状態を解除し、そこに制癌剤を投薬するというスキームが考えられているようですが、癌幹細胞は、眼に見える固形(塊の)癌と違い、細胞1個単位のレベルの話ですから、なかなか難しい戦いになると思います。
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