インフォームドコンセントの難しさ・キット診断について③
北森ペット病院・北森です。当院ブログをご覧頂き、感謝いたします。
本日は、インフォームドコンセントの難しさ・キット診断についての③です。キットの検査結果の解釈が如何に難しいか、獣医師のほとんどが誤解してる問題です。
前ブログで、インフルエンザキットを用いて、流行期と非流行期での陽性の意味合いの差について論じましたが(数値は、あくまで仮定でしたが)、
今回は、獣医臨床の場で用いる、FeLVキット(猫白血病キット)について計算してみます。
様々なメーカーから発売されていますが、私は某社の高性能のものを使っています。感度98.6%、特異性98.2%のすぐれモノです(もしかしたら最近のはもっと高精度かもしれません。少なくとも昨年までのデータです)
病院に来た猫1000頭について、キットで調べた場合の陽性的中率を計算をしてみます。
● 高汚染地帯(有病率50%)で用いた場合
感染猫500頭で、うちキット陽性は493頭(感度98.6%)。非感染猫は500頭で、うちキット陰性猫は491頭(特異性98.2%)、キット陽性猫は9頭(500-491)。
陽性的中率は、
493÷(493+9)×100=98.2%
● 低汚染地帯(有病率1%)で用いた場合
感染猫10頭で、うちキット陽性は9.86頭。非感染猫は990頭で、うちキット陰性猫は972頭、キット陽性猫は18頭。
陽性的中率は、
9.86÷(9.86+18)×100=35.3%
● 超低汚染地帯(有病率0.1%)で用いた場合
感染猫1頭で、うちキット陽性は0.986頭。非感染猫は999頭で、うちキッ陰性猫は981頭、キット陽性猫は18頭。
陽性的中率は、
0.986÷(0.986+18)×100=5.19%
キット陽性だった場合の陽性的中率は、地域の汚染状況によって、98.2%、35.3%、5.19%と、まったく違ってきます。
さて、あなたの先生は、あなたの地域のFeLV有病率を、どのように見積もっているのでしょうか?
繰り返しますが、癌マーカーなるものが最近業界でしばしば話題になりますが、有病率も調べられていない、また感度・特異性のデータもまったく無いそれらの製品に、まったく意味が無いことが、わかっていただけたでしょうか?
人の分野で、現在の癌マーカーが意味があるのは、癌と確定診断したのち、治療に反応して数値が下がるかどうかという治療効果に用いた場合だけなのです。
北森ペット病院
http://kitamori.in.coocan.jp/
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