犬アトピー性皮膚炎・アポキルに関する情報
北森ペット病院・北森です。当院ブログをご覧頂き、感謝いたします。
本日は、犬アトピー性皮膚炎治療薬のアポキルに関する情報お話をします。
近年、犬アトピー性皮膚炎治療薬のJAK阻害剤・アポキルが話題です。効果はステロイドと同等、効果発揮時間はステロイドよりも早く、かつ重篤な副作用も報告されていません。
しかし、同じタイプの薬が人ではリュウマチ治療薬で使用され、2000人に対する使用で8人が死亡した事実、加えて、リュウマチ学会が使用に際しては厳格にする旨の通知を出している事もあり、当院では発売以来2年間、使用を控えてきました。
https://www.ryumachi-jp.com/info/news150713.pdf
最近、様々なデータが公開され、アポキルとヒトのJAK阻害I剤とは、作用点が若干異なることがわかってきました。アポキルはIL-31を、上記のJAK阻害剤・ゼルヤンツは、IL-6を主なターゲットとしているのです。
同じメカニズムでも、若干の作用点の違いが、副作用報告の差になっている可能性が出てきました。
というわけで、当院では、2018年3月をもって、アポキルの使用を開始する事に致しました。
今回の新薬アポキルは、ヒトでの副作用と犬での副作用が合致しないというのが、使用を控える理由でしたが、
加えて言うと、薬に効果あるのと、薬で寿命が延びるのはまったく次元が違います。
人では、以前、不整脈の薬を飲ませ続けた場合、逆に死亡率が上がったという有名な研究がありました(Cast study)。
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/?term=Echt−DS+et+al.,+N+Engl+J+Med,+1991
新薬が出た際は、自分なら、あるいは自分の子供に飲ませられるか・・・という基準で、いつも処方を心がけています。
ちなみに、動物アレルギー性疾患国際委員会が出した、犬アトピー性皮膚炎(AD)のガイドライン(最新版2015年)は以下になります。
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/26276051
簡単に書くと
・acute flares of AD (急性悪化期のAD)
oral glucocorticoids (ステロイド)or oclacitinib(アポキル)
・chronic canine AD (慢性期のAD)
oral glucocorticoids(ステロイド), oral ciclosporin(アトピカ), oral oclacitinib(アポキル)
です。
●当院皮膚科のページ
http://kitamori.in.coocan.jp/dermatology.html
●北森ペット病院 (千葉県茂原市)
http://kitamori.in.coocan.jp/
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