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北森ペット病院


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2018年5月

2018年5月30日 (水)

アメフト問題とインフォームドコンセント

北森ペット病院・北森です。当院ブログをご覧頂き、感謝いたします。



本日は、世間を騒がしているアメフト問題とインフォームドコンセントについて。



世間を騒がせているアメフト問題の会見で、日大のコーチの、『強い言葉は吐いたが、選手が誤解して受け取った』みたいな発言がありました。


コーチの発言が、真実が、嘘かはともかくとして、この発言は、まったくコミュニケーションを誤解している発言だと思いますね。


『私の事、嫌い?』


『うん、大嫌い!』


私の好きなシチュエーションの例えですが、この会話が、もしかしたら恋人同士の会話かもしれない・・・・つまり、嫌いという言葉で好きと伝えているかもしれない・・・・・と言う事は、まあ、容易に想像できます。


コミュニケーションとは、言葉によるメッセージ(情報)以上に、メタメーセージ(言葉を発する深層)を伝えることです。


人は、嫌いという言葉で、好きな感情を伝えることができる奇妙な生き物なのです。


そうなると、そもそも誤解を与えたのではなくて、そのようにメタレベルで伝わったと言う事ですから、どちらにせよ、コーチに原因があるわけです。


我々の現場のインフォームドコンセントも良く誤解されますが、医学の知識量が明らかに違う飼い主に病気の説明をして、情報が全て理解されるとは思いません。


それよりも、メタのレベルで、獣医師と、飼い主がコミュニケーションをとれる関係が重要なのです。



北森ペット病院(千葉県茂原市)
http://kitamori.in.coocan.jp/

2018年5月28日 (月)

寿命の話③

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本日は、寿命の話③です。


生物の世界では、以前より、摂取カロリー制限(caloric restriction, CR)が、寿命を延ばすことが知られていました。


1935年のネズミを用いた実験が有名ですが、2009年には、猿も同様にCRで寿命が延びることが実験で明らかになりました。

さて、このCRによる寿命延長の効果ですが、長らくメカニズムがわかっていませんでしたが、最近、面白い報告を見つけました。


その前に、生物の体は、常に細胞が置き換わっています。また恒常性を維持するために様々な物質が体をめぐっています。

これを調整するのが言わずと知れた遺伝子ですが、21世紀に入って、この遺伝子が、後天的に調整されていることが知られるようになり医学の世界では一大ブームになっています。



それを、遺伝子のエピジェネティック(後生的)な修飾といいます。



一般の方は、遺伝子が全てを調整していると思われているかもしれませんが、実は、遺伝子それ自体も、エピジェネテイックな調整をうけて発現が制御されています(つまりある遺伝子があっても、エピジェネテイックな変化で、遺伝的な効果を発揮しないということ)。


例えば、癌は、癌を抑制する遺伝子によって、癌の発生が抑制されていますが、この癌抑制遺伝子がエピジェネティックな修飾で変異すると、癌の発生が高まります。


報告では、加齢によりエピジェネティックな修飾を受ける遺伝子が増えますが、CRをその速度を減少させることがわかりました。


肥満と癌の関係は有名ですが、
http://kitamori.air-nifty.com/blog/2018/01/post-3be9.html


肥満もカロリーオーバーですから、今回の報告にも明らかに相関する話ですね。


腹八分目と言いますが、ようやくその言葉に科学が追いつきましたね。昔の人は偉いですね(笑)。



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2018年5月26日 (土)

寿命の話②

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本日は、寿命の話②です。


日本人は、将来的には、半数以上の方が107歳まで生きると言うデータの話を先回しました。


長寿は喜ばしい事ですが、如何に健康的に歳を取るかが重要です。現在、要介護となる要因としては、認知症を除いて


●メタボリックシンドロームによる心臓血管障害

高脂血症、高血圧、糖尿病、肥満


●ロコモティブシンドロームによる骨折

骨粗鬆症、サルコペニア(筋肉量減少)、転倒症


です。いずれも、食生活、運動によって予防できますので、私も含めて、皆さん一緒にがんばりましょうね。


さて、犬猫の超高齢期ですが、正確なデータはありませんが、印象ですと、ヒトの様に、不摂生な食生活による健康障害(メタボ一般、骨そしょう症)は少ないと思います(ただし、サルコペニアに関しては、未だ獣医領域では話題にすらなっていません)。


これは、ヒトと違い、犬猫は、究極のバランス食であるペットフードで管理されているからだと思います。


良質なペットフードが、如何に犬猫の健康に寄与しているかがわかります。


ちなみに、犬猫の高齢期の介護という意味では、日本犬の認知症、夜泣き(無駄吠え)が多くの獣医師の頭にイメージされると思います。


現在のところ、犬の認知症は、ヒトのアルツハイマー型の認知症に病態が似ているとの報告があります。また、特定の犬種、系統での発症が多いので、遺伝的素因も指摘されています。


当院での安楽死実施症例も、日本犬の認知症、夜泣き(無駄吠え)の症例が、癌の症例を抜いて、圧倒的に多いです。


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2018年5月24日 (木)

寿命の話①

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本日は、寿命の話①です。


最近、世界的な人口動態の研究所・マックスプランク研究所が衝撃的なデータを発表しました。


それによると、2007年に日本に生まれた子供は、平均107歳まで生きるというものです(ちなみにアメリカ、フランス、イギリスは103~104歳)。

http://gooday.nikkei.co.jp/atcl/report/18/020700008/042700004/


恐ろしい時代に入ってきました。


ちなみに、犬猫の飼育下での平均寿命は(実際は、当然ながら、死産や販売前のデータは入っていません)、ペットフード協会の最新のデータでは、犬14.19歳、猫15.33歳です。

http://www.petfood.or.jp/topics/img/171225.pdf


当院では、猫の最長齢は23歳。犬は21歳です。猫の20歳齢以上は、しばしば見ますが、犬の20歳齢以上は、開院20年で2頭です。


つづく


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2018年5月22日 (火)

寒いと痩せる体質に? 新たなやせ薬のターゲット

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本日は、寒い地方の人は、痩せる体質になると言う話と、そのメカニズムを利用した痩せ薬の研究のお話です。


肥満の原因と言えば、言わずと知れた脂肪。


この脂肪、脂肪細胞という細胞に普段蓄積されています。


脂肪細胞は、白色脂肪細胞、褐色脂肪細胞に分類されます。それぞれの意義は、



● 白色脂肪細胞 : 脂肪の蓄積を目的とする細胞

● 褐色脂肪細胞 : 脂肪を燃やして熱産生する細胞


一般的に、寒冷地や、急激に環境の温度が下がると、褐色脂肪細胞の脂肪は、体温を上げるために燃焼し、熱産生します。白色の方は、普段は脂肪を燃焼させる機能はありません。


最近、長期に寒冷ストレスにさらされると、白色脂肪細胞が、褐色脂肪細胞との中間のようなベージュ脂肪細胞に変化することがわかってきました。ベージュ細胞は、褐色と同様に、熱産生機能を有しているので、脂肪を燃焼させます。



寒冷ストレスが続くと、アドレナリンが放出され、JMJD1Aという酵素が働き、白色をベージュ細胞に誘導するのです。


ということは、薬剤でJMJD1Aを刺激すれば、さも寒冷地にいるように白色がベージュに誘導され、白色脂肪細胞にたまっていた脂肪が燃焼し、つまり痩せるわけですね。


非常に面白い研究ですね。


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東北大学発の面白い研究です。
https://www.tohoku.ac.jp/japanese/2018/04/press20180420-shibou-nensho.html

2018年5月20日 (日)

子供の成長

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子供も小学校高学年になりました。


今年から学童保育を卒業し、病院診察時間内に学校から帰宅して来るので、飼い主さん達に、大きくなったね~と声をかけられる機会も増えました。


ええ、両親に似てちっこいですが、大きくなりました(笑)。


出産当日まで院長(妻)は仕事して、仕事終わってから入院して出産、5日後に退院して翌日から仕事復帰・・・・・・突っ走ってきましたね。



あまり体重の変化がない院長は、それでなくても白衣なので体型の変化が最後まで余り現れず、出産で6日間病院を休診していると言ったら、『誰の出産? 犬?って』言われたこともありました。



あれから数年、早いものです。



こんなのが

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こんなになりまして

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やっぱりこんな親の影響ですね

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2018年5月18日 (金)

ちょっとした言い回しの違いで印象が変わりますね

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今日は、ちょっとした言い回しの違いで印象が変わると言う話をします。


この時期、ワンちゃんは各種予防のシーズン、飼い主さんにおかれましては医療費の出費かさむ季節で、少々申し訳ないと思っています。


予防の柱となるフィラリア予防薬の処方料は、多頭飼育や中型犬以上の飼い主さんを悩ませる金額になることもあります。


薬剤によって、また、病院によって薬の処方料は異なります(一緒にすると独禁法に触れます)が、


当院では、2.5 kg以下、5 kg以下、10 kg以下、20 kg以下、40 kg以下の区分でフィラリアア薬のサイズが変わります。それに伴い、処方料も1.5~2倍も変化します。当然、体重が重いと高額になります。


この時期、よくあるシーンです。


これまで、 体重9 kg台だった子に、5~10 kg用の薬を処方していたが、とうとう10 kgを超えてしまったという場合の診察室での会話です。



『昨年注意して下さいと言ったのに、10.1kgになっていますから、上のサイズの薬で出しますよ。処方料が●●円上がります。』


これだけですと、多くの飼い主さんの反応は、



『たった、100 gなんて誤差でしょう?下のサイズで出して下さい』


ですね。


しかし、



『昨年の薬は、7.5 kgの子に処方の中心があって、下は5 kg、上は10 kgまでなんですよ


と、言うと、



飼い主さんは、とても神妙になってくれます。


情報と言うのは、ちょっとした言い回しの違いで印象がずいぶん変わりますね。



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2018年5月16日 (水)

飼い主の皆様、ブリーダー様、感謝致します。

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この度、某学会から、ボクサー犬の心筋症に関する講演の依頼を受けました。私は、その学会の会員ではないのですが、昨年出した文献が認められての依頼です。


もともと循環器の企業研究者だったことから、臨床にきてすぐにこの謎の心筋症に興味を持ちました。20年前の事です。この心筋症は、ヒトとボクサー犬と、極めて稀に猫にしか発生しない、珍しい疾患です(ヒトでは若くしての突然死の主要な疾患の一つ)。



データを取るための、高性能エコー、ホルター心電計数台、心電図解析ソフトを10年くらいかけてようやく揃え(だって茂原では中古の家が買えるくらいの価格ですから)、当時の手持ち資金を全て投入して、臨床研究・調査に着手しました。


そもそもボクサー犬自体の飼育頭数が少なく(JKC登録で200頭程度)、ボクサー犬でも数割程度しか発症しません。


やる気になったのは良いですが、初めは症例がまったく集まりませんでした(おそらく、99.9%の先生は出会ったことが無い疾患だと思います)。


しょうがないので高名なブリーダーを介してボクサー犬をかたっぱしから集めました。他県に出張したり、そのブリーダーを介して関東圏から来院してもらったり、地方のボクサークラブの協力を得たりしました。


症例は年々増えて行きましたが、論文に決定的に必要だったの、遺体でした。この疾患で死亡した犬の心臓がどうしても必要だったのです。


ヒトの医療と違い、獣医の世界で献体を提供頂くのは、極めてまれです(不審死に対する司法・行政解剖のような法律もありません)。



調査を始めて、5年目くらいに、ようやく先に記したブリーダーさんを介して献体頂けました。そのブリーダーさんは、夜中に、埼玉からわざわざ死亡した犬を茂原まで運んでくれました。本当に頭が下がる思いでした。



計画から十数年、最近ようやく論文を2報出すことができました。もし10年早かったら、医学部の研究生にでもなって、遺伝子導入でこの心筋症を治すような画期的な研究をしたかったのですが、若さとお金が底をついているので、諦めました(凡人ですから)。



でも、皆さんの協力を得て、少しは獣医学に貢献できたなと思います。


全て無料で行った為、まったく経営には貢献致しませんでしたが、病院の心エコーの技術、心電図解析の技術は格段に進歩したと自負しています。また、この研究が縁で、素晴らしい獣医循環器専門医の先生、画像診断医、日本を代表するような世界的な企業の病理研究者との出会もありました。



形になったもの以上に、臨床獣医師として眼に見えない財産を得ることができました。


本当に、飼い主の皆さん、ブリーダーさん、クラブの皆さん、そしてワンちゃん、ありがとうございました。



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2018年5月14日 (月)

身近にある意外なアレルギー物質

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今日は、身近にある意外なアレルギー物質についてです。


動物医療で有名なアレルギー物質といえば食べ物関係で、食事が原因の皮膚炎(痒い)で悩む飼い主さんは多いです。


次に有名なのは、ワクチンです。昔の某メーカーのワクチンは、(私は使用しませんでしたが)、考えられないくらい高い率でアレルギー症状が出ていましたね。


しかし、当院では、開院して20年間で、この2つのアレルギーよりも、それ以外が原因のアレルギーの方が症例としては多く、また、意外なものなので、注意喚起のために、飼い主さまから了承を得て、写真を掲載致します。


原因① 消臭剤

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目の周り、鼻が腫れていますね。いわゆるムーンフェイスってやつです。ワクチンアレルギーの時に出る症状です。この腫れが、気道周りに発生すれば、呼吸困難で死亡します。


原因は、誰でも知っている有名な消臭剤です。消臭剤は、臭いの吸着物質として植物系の物質を使用しています。植物は、花粉症でも有名なように、アレルゲン物質ですから、しばしばこのような事態になります。


同じメーカーの消臭剤で数例同様な経験があります。




原因② お花

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左目の周りが腫れて、鼻先にボツボツ出ています。


これは、ワンちゃんの飼育スペースに、ある花を移動させた直後に見られた反応です。①の消臭剤もそうですが、症状発生時は、飼い主さんはまったく原因に気が付かない事が多いです。病院で、丹念にお話を聞くことによって、事後的に原因が分かった事が殆どです。この症例も、お話を聞いているうちに、飼い主さんが、はっと気が付かれた症例です。


アレルギー反応は、多くは自然のたんぱく質が原因です。なので、自然のもの(を使っている)だから安心という発想は非常に危険です。


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皮膚科
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2018年5月12日 (土)

ペットの突然死・急死

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今日は、ペットの突然死・急死について書きます。


毎年、数件、ペットの突然死・急死に遭遇します。特に犬で多い印象がありますが、体重の減少も無く、毛並みも良く、食欲も十分に有ったペットが、朝起きたら、仕事から帰ってきたら亡くなっていた・・・・・そんな事例です。


とても悲しい出来事です。


ヒトで突然死・急死と言うと、狭心症(心筋梗塞)、脳卒中が2大疾患です。



狭心症に関してですが、


ヒトの狭心症の背景には、心臓の血管の動脈硬化がありますが、動物の場合は、一部のウサギやハムスターを除き、動脈硬化は起こりません。また、犬の場合は、実験的に狭心症を起こしても死亡することはありません(心臓の血管走行が多いので、詰まってもなんとかなるのです)ので、ペットの急死の背景に、狭心症があるとは思えません。




脳卒中に関してですが、


人では動脈硬化と、高血圧が背景にある疾患ですが、前述のように犬猫には動脈硬化はありません。高血圧に関しては、犬猫とも腎臓病を持っている子の3割程度が発症しているとの報告があります。ただ、腎臓病を持っていると、痩せてきたり、飲水量が上がったり、なんらかの前兆があるものです。なので、飼い主さんが驚くかたちでの急死にはならないような気がします。また、犬のMRI検査のデータでは、犬の脳卒中の場合は、前庭疾患(首が傾く、ヒトで言うメニエールのような疾患)様の症状が多いとのことで、は意外と少ないようです。



では、ペットの急死・突然死の原因はなんなのでしょうか?



残念ながら、現段階では、私にはわかりません。



ただ言えることは、ほとんどが高齢のペットで、くわしい健康診断(ドック)を事前に受けていないケースがほとんどだと言う事です。


健康に見えても、実は、大病を抱えていたかもしれないのです。



ペットの死はつらいものです。しかし、臨床をやっていて思うのは、死自体もそうですが、死の原因がわからないことが、飼い主にとってどれほどつらいことか・・・・・。


最近どこの病院でも健康診断(ドック)を宣伝しています。当院もそうですが、やはり健康診断(ドック)というのは、とても大切なことだと思います。もちろん、それで全て原因がわかるわけではありませんが・・・・。


ちなみにヒトの場合は、年間120万人の方が亡くなっておられ、そのうち7人に1人が、原因不明死だそうです(人間の場合、事件の可能性もありますが)。


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健康診断
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2018年5月10日 (木)

男性型・女性型脱毛症の治療(ヒト 皮膚科ガイドライン)

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今日は、我々の年齢では切実な?問題の禿げ(ヒトの)の治療についてです。


昨年、皮膚科学会がひさしぶりに男性型(女性型も)脱毛症の治療ガイドラインを改定して発表しました。


普段、医療従事者が、どのような思考回路でデータを見ているかが分かる貴重な資料ですから、皆さんもぜひ見てください。


たとえば、2Pの推奨度の分類と、4Pの表になっている治療法を見比べて下さい。

https://www.dermatol.or.jp/uploads/uploads/files/AGA_GL2017.pdf


私が驚いたのは、LEDレーザーが推奨度Bになっていることです。早速、買おうかな~


人間の病気の治療法を知りたい時は、このように学会が出しているガイドラインを見ることです。実は、さまざまなガイドラインが公表されています。冗談のようなネット情報に惑わされないように、知的に情報を検索して下さい。


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当院皮膚科のページ
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2018年5月 8日 (火)

米国発の面白い研究

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今日は、米国発の面白い研究をご紹介します。


医療系TVドラマが、一般の患者に与える影響についての論文です。


http://tsaco.bmj.com/content/3/1/e000137


日本では、『私、失敗しないので』で有名な外科医のドラマが人気ですが、米国でも同様な人気の外科医ドラマがあるようです。

研究者は、その人気外科医ドラマの269話に登場する患者290症例と、1年間に実際に外科処置を受けた患者4812例について治療経過を比較しました。


その結果、例えば、術後長期的なケアが必要な割合が、ドラマでは6%、現実の症例では22%。重症患者が1週間以内に退院する割合は、ドラマが50%で、現実の患者では20%でした。


研究者は、このように実際の医療現場とはかけ離れている医療ドラマのストーリーが、患者やその家族に、処置に対する誤った認識を植え付けている可能性がある・・・・と結論づけています。


要するに、TVと現実は違う!という事ですね。当たり前ですが・・・・・・・。


皆さんも、あんまりTVドラマを信じないようにしましょうね。


しかしまあ、米国人というのは、徹底的に比較研究するのが好きですね。頭が下がります。


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2018年5月 6日 (日)

獣医師と飼主との関係は簡単に壊れます

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本日は、獣医師と飼主との関係は簡単に壊れますというお題です。


うまくいっていた飼主と、獣医師の関係なんて、あっという間に壊れることがあります。ケースとしては、ブリーダーが診察内容に口をはさむパターンが案外多いのです。


実際の私の症例を(細部を少し変えて)お話します。


2頭のブルドックを当院で診させて頂いていた飼い主さんが、3頭目の、やはりブルちゃんを購入しました。


購入後すぐに、(私が診断する限り)命に関わるある症状が出たため、検査を実施したところ、やはり命に関わる先天性の疾患が確認されました。


手術で治る可能性もある疾患だったのですが、念の為、大きな病院で精査した方が良いので、紹介状を書く旨を伝えて、一度ご家族で相談するように伝えました。


数日後、その飼い主が来院され、『その様な疾患ではないと言われた』と、おっしゃりました。


私は非常に驚きましたが、そうか、セカンドオピニオンをうけたのだなと思い、その先生は、どのような検査を実施して診断されたのかを問うたところ、なんと、お世話になっているブリーダーさんが『そのような病気は存在しない』と言ったと返されました。


う~ん。まいりましたね。


実は、これが、良くあるパターンなのですが、獣医師とブリーダーの意見を対等に扱うのは、本当に止めた方が良いです。


獣医学は雑学ではなくて体系学です。何がわかって(出来て)、何がわかってない(出来ない)かが重要になります。体系学を学んでないブリーダーの意見は、非常に雑学的です。雑学は無学です。しかし、雑学はある意味最強です。体系学ではないので反論ができません。


この時点で、将来この方は当院から転院されるだろうと想像はできましたが(転院する可能性は、実はほぼ獣医師側にも伝わるものです)、とりあえず症状が悪化しない対処法を伝えて、今一度、私の診断を伝えました。私なりに説得したと思います。


その後、症状はひどくなり(当たり前ですが)、それでもその方は、私の方よりブリーダーの意見を信じたのですね。2か月程度後に転院されたと思います。それまで2頭のワンちゃんを診察しおり、信頼関係もかなり出来上がっていたと思いますが、この様に、ブリーダーの一言で、関係は簡単に崩れるものなのです。


ヒトというのは、専門家よりも、身近な人間の意見を採用するものだというのは、いまさらの感想ですが、(だって例えば政治・経済の話、専門家より、芸能人のコメンテーターや、床屋談義の方がうけますよね)、ブリーダーの意見と言うのは、我々にとって、ある意味強敵なのです。


(経験的に、9割のブリーダーは困った方々です。欧米で言うところのバック・ヤードブリーダーですね。獣医師と対等に研鑽を積めるシリアス・ブリーダーは、1割といったところです。なんとかなりませんかね。)


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2018年5月 4日 (金)

仔猫を保護した場合

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時節柄か、保護したばかりの仔猫が急変して運ばれてくるケースが目立ちます。


昨日まで元気だったのに・・・・・とか、朝は元気だったのに仕事から帰ったら・・・・・・と言う状況が殆どです。


病院に運ばれてきた時は、低血糖、低体温でフラフラで、救命率も、状況にもよりますが100%ではありません。


そのような状況にならないためのコツですが、子猫を保護した場合、



●3時間程度おきに、栄養を与える(お腹いっぱいになるまで)。
歯が生えていれば高栄養の離乳食、目が開いていない・歯が生えていなければ乳。お腹がポンポコリンになるのが普通です。



●保温に注意。
夏期でも保温は大切です。飼育ケージにタオルを入れて、寒かったらくるまれるようにすること



●遊ばせない。
とにかく栄養を与えて、眠らせるようにすることです。エネルギーはすぐに枯渇します。特に小さなお子さんがいる家庭は、子供がかまわないように注視して下さい。




●お尻を刺激して、俳尿、俳便をこまめにさせること



●心配な場合は、保護後直ちに病院へ行って指導を受ける



仔猫が運ばれてきた場合は、首の静脈から直ちに注射して血糖とビタミンを注入し、必要があれば2日程度の静脈点滴です。




昨日の症例です(飼い主さんの同意は得ています)。右前肢から点滴しています。

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近年、生体の販売規制が厳しくなって、ペットショップで2か月齢以下の仔をみることはなくなりました。




それはそれで良い事ですが、臍の尾が付いた生まれたばかりの仔の面倒をみて成長を楽しむのも、ペットの大五味ですね。そう言う意味では、保護した仔猫は鉄板です。



仔猫ほど可愛い動物はいないんじゃないかと思います。小さな声で書いておきますが、自分の赤ちゃんが生まれた時も、可愛さでは猫が上だと思いましたからね。



写真は、もう亡くなったうちの仔

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2018年5月 2日 (水)

癌統計公表

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本日は、癌の統計データについてです。


先だって、国立がん研究から、最新の癌統計が公表されましたね。


https://ganjoho.jp/reg_stat/statistics/stat/summary.html


興味深いのは、年齢別癌死亡リスと、部位別生存率です。ヒトの方は、癌撲滅は、国家事業ですから、膨大なデータから推計できます。


例えば、私の年齢ですと、10年後、20年後、30年後にそれぞれ癌で死亡するリスクは、1%、6%、15%です。


部位別生存率では、5年生存率が、前立腺がんで97.5%、膵臓がんで7.9%と、かなり差が出ています。

しかし、サバイバー生存率でみると、膵臓がんでも、5年生存率は80%もあります。とても興味深いデータです。初期治療が早ければ、助かる率も高まるということかもしれません。


癌は怖い病気ですが、まず戦う相手の事を知らないといけません。このようなデータを真剣に検討することは、患者側にも非常に重要なことです。

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