獣医師と飼主との関係は簡単に壊れます
北森ペット病院・北森です。当院ブログをご覧頂き、感謝いたします。
本日は、獣医師と飼主との関係は簡単に壊れますというお題です。
うまくいっていた飼主と、獣医師の関係なんて、あっという間に壊れることがあります。ケースとしては、ブリーダーが診察内容に口をはさむパターンが案外多いのです。
実際の私の症例を(細部を少し変えて)お話します。
2頭のブルドックを当院で診させて頂いていた飼い主さんが、3頭目の、やはりブルちゃんを購入しました。
購入後すぐに、(私が診断する限り)命に関わるある症状が出たため、検査を実施したところ、やはり命に関わる先天性の疾患が確認されました。
手術で治る可能性もある疾患だったのですが、念の為、大きな病院で精査した方が良いので、紹介状を書く旨を伝えて、一度ご家族で相談するように伝えました。
数日後、その飼い主が来院され、『その様な疾患ではないと言われた』と、おっしゃりました。
私は非常に驚きましたが、そうか、セカンドオピニオンをうけたのだなと思い、その先生は、どのような検査を実施して診断されたのかを問うたところ、なんと、お世話になっているブリーダーさんが『そのような病気は存在しない』と言ったと返されました。
う~ん。まいりましたね。
実は、これが、良くあるパターンなのですが、獣医師とブリーダーの意見を対等に扱うのは、本当に止めた方が良いです。
獣医学は雑学ではなくて体系学です。何がわかって(出来て)、何がわかってない(出来ない)かが重要になります。体系学を学んでないブリーダーの意見は、非常に雑学的です。雑学は無学です。しかし、雑学はある意味最強です。体系学ではないので反論ができません。
この時点で、将来この方は当院から転院されるだろうと想像はできましたが(転院する可能性は、実はほぼ獣医師側にも伝わるものです)、とりあえず症状が悪化しない対処法を伝えて、今一度、私の診断を伝えました。私なりに説得したと思います。
その後、症状はひどくなり(当たり前ですが)、それでもその方は、私の方よりブリーダーの意見を信じたのですね。2か月程度後に転院されたと思います。それまで2頭のワンちゃんを診察しおり、信頼関係もかなり出来上がっていたと思いますが、この様に、ブリーダーの一言で、関係は簡単に崩れるものなのです。
ヒトというのは、専門家よりも、身近な人間の意見を採用するものだというのは、いまさらの感想ですが、(だって例えば政治・経済の話、専門家より、芸能人のコメンテーターや、床屋談義の方がうけますよね)、ブリーダーの意見と言うのは、我々にとって、ある意味強敵なのです。
(経験的に、9割のブリーダーは困った方々です。欧米で言うところのバック・ヤードブリーダーですね。獣医師と対等に研鑽を積めるシリアス・ブリーダーは、1割といったところです。なんとかなりませんかね。)
北森ペット病院(千葉県茂原市)
http://kitamori.in.coocan.jp/
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