科学って何?④
北森ペット病院・北森です。当院ブログをご覧頂き、感謝いたします。
今日は、科学って何?・・・・の、その④です。
科学の基本は反証可能性と②で書きました。また、③で、反証するには、作法があると書きました。
今日は、それについて。
例えば『森北病』という恐ろしい病気があったとします。
この世にも恐ろしい森北病気に対して、K先生は、丸川マイシンが良く効くという発表をしました。これに対してT先生は、丸川マイシンはまったく効かないという発表をしました。
相反する発表ですが、実は、このような事態は、レベルの低い学会では、よくあることです
丸川ワクチンの会社と仲の良いK先生は、発病間もない軽症の症例に薬を使い、
反対に
丸川ワクチンのライバル会社が好きなT先生は、森北病で、今にも死にそうな重症な症例に薬を使ったとすると、
同じ疾患に対する同じ薬で、全く違う結果が出るのは当たり前ですよね。それどころか、軽症の患者はワクチンなしで勝手に直ったのかも知れず、重症の患者は、1週間前に飲んだらしっかり直ったかもしれませんし・・・・・。
このような恣意的な互いの反証行為を避けるために、今の医学における科学的な作法は、
① 病態をステージ化する
② 薬を処方する人(医師)も何を処方しているかわからない
③ 薬を飲む側も(患者、獣医療の場合は飼い主)何を飲んでいるかわからない
こういう状況を、作り出して、実際に、森北病のどのステージに、丸川ワクチンがどの程度効くか(効かないか)を調べます。
これを、ダブル・ブラインド試験と言います。
プロがデータを見るとき、この作法を守っていないものは、眉唾ですね。先回のブログの①~③にあたる報告では、必ずこの作法を守っています。
一般の方の場合は、例えば、●●に必ず効くとか、絶対に効くとかという文言がでたら、怪しいと思う気持ちが必要です。特に慢性疾患や、老齢期の疾患に対するサプリなんて怪しい限りですから。
絶対や、必ずには、反証ができません。科学じゃないということですね。
ある時、この話をすると、患者さんが、じゃあフィラリア予防薬も絶対じゃないの?って言ってきました。
私は、『そうですね、絶対ではない』 とお答えしました。
科学的には、薬に対するフィラリアの耐性獲得の問題も残ります。
ある犬では、ある有名なお薬が、消化されず便にゴロリと出てきました。
ある飼い主さんは、薬を飲ませていた完全室内飼いの犬がフィラリアにかかってしまい、私もおかしいと思って、よくよく観察させたら、その子、薬を飲んだ後、必ず飼い主のいない所で吐き出していることがわかりました。
絶対・・・・なんていい始めたら、思考停止ですからね。
つづく
北森ペット病院(千葉県茂原市)
http://kitamori.in.coocan.jp/