製薬業界が獣医業界をダメにする②
北森ペット病院・北森です。当院ブログをご覧頂き、感謝いたします。
今日は、製薬業界が獣医業界をダメにする・・・その②です。
例えば、アトピー分野
何物入りで、10年位前に流行ったアトピーの新薬・2種類。人間の方の薬から考えたら、一つはありえないくらい怖く、もう一つはメカニズム的に?のものでした。価格も、獣医皮膚科学会の推奨する標準薬の10倍くらいでしたね。
いや~、効かなかったですね。少なくとも費用対効果はひどかったです。私は一切自分からは使用しませんでしたが、あの時はほとんどの獣医が処方しましたね。
(効果が弱いことはなぜ報告されないのでしょうか?私は使用してないので報告できません)
そして10年たって、また同分野で新薬登場。前の新薬がひどかったから、新たに登場しました。
でもこの薬、メカニズムは斬新でしたが、ヒトで、同様のメカ二ズムの薬が、死亡事故起こしているの獣医の皆さん、知っていたのでしょうかね?
もっとも、この薬は、現在発売2年たって、私自身も調べて、ヒトと犬とでは、作用点が異なることがわかりましたので、私も、ようやく最近、飼い主に説明して私用する事も(ゴク稀に)あります。
詳しいことはこのページの⑨をお読みください。
http://kitamori.in.coocan.jp/dermatology.html#hifutop
もう一例
ある犬の心臓病をターゲットに、人間でまったく症状を改善しないどころか、悪化させる懸念がある薬が、ヒトで売れないものだから、犬の新薬として登場しました。
色々な研究を経て、どうやら犬では、ヒトと違い、ある状況で使用すると、効果を発揮することがわかりましたが、
私は、そもそも犬の50例程度の研究は信用しません(ヒトは1000~1万例です)。
その薬剤を、自分で納得いく論理を見つけて、使用するまで、5年程度を要しました。はじめは恐る恐るでした。尊敬する某心臓病の専門医も、同様だったと、最近聞きました(だって、人間では使用してはいけないのですから)。
当然ながら、その薬剤を使用してないからといって、当院にかかりつけている心臓病の犬が早死にするような不利益はありませんでした。だって、これまでの標準薬で、十分、生存(延長)効果はありましたからね。
新しい薬がでたら、製薬のMR(営業)に、よい情報だけ与えられて、すぐにその気になって使うという態度は、非常に危険です。
昨日の①でも書きましたが、研究(治験)データは、あくまで、その病気しか持っていない動物に対するデータです。臨床現場では、様々な背景の子がいます。
あまりに安易です。
クリティカル・シンキング(批判的考え)、クリティカル・リーディング(批判的なデータの読み方)が、多くの獣医には本当に本当に、欠如しています。
まあ、人間では効果がないと結論付けられている、なんちゃって細胞免疫療法を、業界のビックネームが学会で浮かれて報告するくらいですから、もう悲しくなりますね。
というわけで、これまで比較的うまく行っていた治療に、新薬なんぞ使う場合は、細心の注意と、論理が必要なわけです。
製薬会社に騙されるな! と強く言いたいです。
(元、製薬出身ですが・・・・とほほ)
つづく
北森ペット病院(千葉県茂原市)
http://kitamori.in.coocan.jp/
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