インフォームドコンセントって難しい②(存在論と認識論)
北森ペット病院・北森です。当院ブログをご覧頂き、感謝いたします。
今日は、インフォームドコンセントについての話、その②です。
存在論と認識論について。
フィラリア感染症という怖い有名な病気がありますね。蚊が吸血するときに、犬にフィラリアという寄生虫を感染させ、感染したフィラリアは犬の心臓に寄生して発育、生殖します。治療しなければ、数年後、犬は、心不全、多臓器不全で死亡します。
都会ではあまり見なくなりましたが、当院ではまだ数年に1回出会います。
さて、このフィラリア症の治療ですが、今は、お薬でフィラリアを退治していきます。
一般的には、生きた成虫・子虫がいなくなり、元気があれば、それをもって治ったと表現することが多いと思います。
しかし、実は、胸のレントゲンを撮ると、肺に影が残っていたりします。死亡したフィラリアが詰まったり、フィラリア症の血栓塞栓がその原因だと思われますが、
恐ろしいことに、フィラリア症の完全なる治癒は、いったいどのような事を指すのか、だれもわかりません。論文上も、CT、レントゲンで継続的に肺の障害を追った報告は皆無です。
繰り返しますが、一般的には、虫がいなくなって、元気であれば、治ったと表現することが多いです。
存在論的に言えば、虫はいなくなっても、肺野の異常が残るので、(心エコーが得意な先生であれば、更に肺性高血圧を調べるかもしれません)、まだ病気はあります。
しかし
認識論的に言えば、虫はいなくなって、肺野の異常が残っても、元気であれば、フィラリア症は存在しません。
認識論ということは、獣医師が認識するわけですから、獣医師によって、差が出るということですね。
病気がある、病気が治るとはなんでしょうか?
つづく
北森ペット病院(千葉県茂原市):PC用
http://kitamori.in.coocan.jp/
北森ペット病院(千葉県茂原市):スマホ用
https://www.kitamori-ac.com/
« インフォームドコンセントって難しい①(フレーミング効果) | トップページ | インフォームドコンセントって難しい③(獣医師より看護師) »
「獣医療・インフォームドコンセント」カテゴリの記事
- やっぱりドロップ(再生医療)(2024.08.16)
- 昔とは違うね~その②(2024.07.24)
- 昔とは違うね~(2024.07.24)
- 久々にHPに大きな項目を作りました(2024.01.12)
- 最先端の道はつらいな(2023.12.17)