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北森ペット病院


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2020年7月 9日 (木)

私は誤診をとても大切にしています。

昔、東大の医学部の有名な教授が退官の記念講演のときに、

私の誤診率は30%(・・・正確な数値は覚えていません・・・)でした・・・とお話されて、

聴衆に、とても驚かれたのは有な話です。



誤診率の低さにです、高さではないです、低さにです。


1990年代の米国の医学部の内科学会系の論文でも、臨床医の初診時の正解率は60~70%(誤診率40~30%)だったやに記憶していまます。



何が言いたいのかというと、

臨床医は、私も含めて、日常的に誤診するということです。



誤診には、こんなパターンがあります。


パターン①

エコーがなかった20年前は、
黄疸で急死した犬は、ほぼほぼ肝臓がんで処理していましたが、

今ならば、
肝臓がんは意外と慢性経過をたどって急死せずに、胆嚢疾患・・・・破裂破裂とか、粘液のう腫とかが原因に多いことに気が付きます。

完全に、誤診していましたね。

でも、これは、どうしようもない・・・・だって機械はないし、検査法がないし、急死だから手遅れ。手遅れ感が、ガンという嘘を成立させてましたね。今ならば、胆嚢疾患をドックでみつけて、急死させないようにがんばれますけどね。

 

ちなみに、人のインフルエンザ(「ウイルス性です)は、昔は細菌性の風邪で治療されてましたね。盲腸だって、かたっぱしから手術してましたが、怪しいね・・・。



パターン②

いまだに横行していますが、聴診して、雑音があって、はい心臓病で、薬!・・・・みたいな奴。この場合、70%は薬がよく効くので、間違いではありませんが、30%は、そのハイ薬ってパターンには収まらない心臓病ですね。心臓のエコーが見られないと、30%は誤診していますね。



パターン③

一番、多いパターン。

症状や血液検査ででアタリをつけて、薬を出す。でも薬がまったく効かないので、ようやく誤診であることに気がつくパターン。たとえば嘔吐が多いので、一番良くみる急性の胃腸炎かな?と思って胃腸薬だして、でも一向に効かなくて、もしやと思って内視鏡入れたらガンだったとかね。



さてさて、


パターン①は、獣医も飼い主も、誤診であることにき気がつきません。真面目な獣医ならば、数年後、『ああああああ』って心が痛みます。


パターン②は、飼い主が、誤診であることに気がつきません。


パターン③は、飼い主が、獣医を信頼して、再来院してくれたらば、獣医も誤診に気が付きます。



私は、常日頃、誤診をしますが、

数年たったとしても①に気がつきたいし、②のような飼い主の無知に付け込む誤診だけはしたくない。


そして、やはり

③の誤診を乗り越えるところに、臨床獣医師の真の力量があると思う。


③のパターンは、

飼い主が、再来院しないと、こちらが気が付きません。

飼い主が誤診に気がついて、獣医師が気がつかないパターンなのです。


おおおおお、こわ!


私たちは、何も、病気あてクイズをやっているわけではありません。


仮説をたてて検証する・・・・ときに、薬の効果をみて、最終的な診断をするのは日常です。治療的診断といいますね。

その論理が、飼い主につたわるかどうかが、力量だ思います。


先生、効かないよ、なんとかして!

って、飼い主に言わせる力量ですね。


というわけで、


私は誤診をとても大切にしています。


誤診をしないという獣医は、①と③のパターン

うちの主治医は誤診しないと思っているのは①と②のパターンの飼い主

ですね。


あああ、能天気!


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