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北森ペット病院


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2023年3月15日 (水)

全身麻酔の事故・・・① どうして?

当院の顧客には、以下の2パターンがあります。


① 当院に、かかり付けの方

② 特殊な検査のために、予約で来院の方


②のパターンの場合は、時に、2時間近く検査が続き、その間、色々なお話しをします。


で、

そこでよく話題になるのが、健康だと思われる子での、全身麻酔処置での死亡事例についてです。



健康なだと思われる子に全身麻酔・・・・、


去勢・避妊・歯科処置等での死亡事例のことです。



知合いの知合いの話まで入れると、②で来院された方からは、しょっちゅうそのような話を聞きます。


つまり

少なからず、

健康だと思われる子の全身麻酔での死亡事例はあるということです。



医療と違い


手術での死亡事故が起きても


原因究明をする制度がないので、基本は、原因不明のことが多いです(実は、獣医師側も、そのような制度が欲しいくらいです)。


さて、

麻酔での死亡事例は、何が原因で起こるのでしょうか?


以下は、そのような話になった時に、私が飼主さんにする話です。


人間の場合は、長期間手術での血栓症等が問題となるようですが、



獣医療の場合は、私が想像するに


① 中枢神経系(脳内)への障害

② 循環器系への障害

③ 止血異常(血が止まらない病気)

➃ 麻酔薬の特殊な副作用


等が、原因だと思います。



理由は、

(1) 術前に検査されない(できない)領域

・脳の検査は、
全身麻酔下でのMRI/CT検査で実施されるので、全身麻酔をかける前に脳の検査はできません。


・心臓の検査は、
エコー検査で実施されますが、検査をできる獣医師が少ないのと、高額なため、健康だと思われる子の術前検査では一般的ではありません。


・止血の検査は、
全病院が導入しているわけではない特殊な検査に該当します。


・麻酔薬の特殊な副作用に、
悪性高熱といって、麻酔薬投薬後、異常に体温が上昇するケースが報告されています(非常に非常に稀な事例です)




(2) 死亡事例の経過やプロファイル

・脳への障害
麻酔覚醒後の痙攣のような、脳へのダメージ(脳ヘルニア等)を想像するような事例を、しばしば聞く。逆に、脳に疾患がある症例の、麻酔下での検査(MRIなど)での死亡事例を経験している。


・心臓への障害
突然死を発症する特殊な心筋症の好発種での死亡事例を、しばしば聞く。


・止血異常で
術中、出血が止まらない事例を、非常に稀に聞く。

・術中体温上昇
術中に異常に体温が上昇するケースが、非常に稀であるが報告されている。



(3) 副作用面からの想像

・脳への影響
麻酔薬の中には、脳に影響を与える(脳圧を上げる等)薬剤がある。


・循環器系への影響
麻酔薬や人工呼吸の操作が、血圧や、心機能に影響を与える事がある。


・個体側の問題
悪性高熱のような麻酔薬による致死的な副作用は、麻酔薬をかけてみないとわからない(事前にはわからない)。


です。


・・・・・・・・・・・・・


さも他人事のように書きましたが


当院でも、


脳へのダメージが想定された麻酔事故(麻酔覚醒後痙攣)を、避妊手術で経験しています。この事例以後、麻酔法を根本から見直し、麻酔関係の機械を全て最新式にし、また、当院で手術される方には、この事例の説明を、事前にさせて頂いています。



去勢・避妊・歯科処置の際の死亡事例は、外科的な手技のミスで亡くなるのではなく(もちろん、機械の操作ミスも含めそういうこともあるかもしれませんが)


麻酔自体でなくなる事も、想像できるということです。


私は、診察室では、獣医療における全身麻酔のリスクは、0.2%とお話しています(一時期のコロナの死亡率ですね)。

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